料理家・平林愛による、
食と暮らしの空間。
Story
人が集う食卓の記憶
幼い頃から、
料理のまわりにはいつも人の輪がありました。
従姉妹家族と同居する大家族の中で育ち、食卓はいつも賑やかでした。
並ぶのは、いつもてんこ盛りの料理。
誰かのためにたっぷり作りみんなで囲んで食べることが、暮らしの中に当たり前にありました。
料理上手だった祖母。
人を招くことが好きだった父。
春には山菜、秋には松茸など季節の味を楽しむことを理由に、家には自然と人が訪れていました。
料理は、誰かと集うためのきっかけであり人と人をあたたかくつなぐもの。
その風景は、今もアイノテの源泉としてある大切な記憶です。
働く女性を応援したい
大学卒業後、印刷業界や人材業界で会社員として経験を重ねながら、料理と旅を自分の「好き」として大切にしてきました。
結婚後は、家族や友人に料理をふるまう機会が自然と増えていきます。
2017年、子育てをきっかけに働き方を見つめ直し、料理を仕事にする道へ。
出張料理から活動を始めました。
そして2020年。
私自身も子育てに奔走する中で
近所の働くママ友たちと「おかーさん食堂」と称し、ともに食卓を囲む機会が生まれます。
誰かが作ってくれた温かい手料理を味わう。
自分のためにほっとひと息つける時間がある。
食卓を囲み自然と会話が生まれる。
仕事に、家事に、子育てに。
毎日の生活を懸命にまわす中、心の余裕をなくしてしまう人たちが身近にいました。
私も同じように母親として日々を過ごす中、どうしたら少しでも力になれるのかを本気で考えるようになりました。
気取らず、そっと寄り添い、必要なときに元気をくれる。そんな食の時間をつくりたい。
おかーさん食堂は、アイノテの原点。
手作りの楽しさと食卓の喜びを、愛の手で届ける。
その思いを胸に「アイノテ」と名づけました。
どうせなら、楽しもう。
私が影響を受けてきたのは、
肩肘を張らない美しさのある料理や空間。
格好つけていないのに、凛としている。
使い込まれた器や作家の一点もの。アンティーク。落ち着きのあるシンプルさ。
そうした世界に触れながら育んできた感覚を、料理を伝え、人を迎える場所にも映していきたい。
父との同居を機に自宅を建て直し、アイノテの土台となる場所を整えました。
出張料理、ケータリング、ミールパック、そして料理教室。
キッチンスタジオという場ができたことで、アイノテの活動は少しずつ広がっていきました。
共通しているのは
暮らしの中で無理なく楽しめること。
時短の工夫や段取りも大切にしながら、ほんの少しのひと手間は惜しまないこと。
その積み重ねが
料理の時間や食卓の景色を変えてくれると感じています。
2024年には
自身の闘病、そして父との別れを経験。
思うように動けない時間や大切な人を見送る時間を経て、仕事も、料理も、人とのご縁も、暮らしの中で自然に循環するものだと感じるようになりました。
忙しい毎日にも、無理なく続く工夫を。
いつもの食卓に、少しの楽しみとスパイスを。
調味料、調理道具、器や盛りつけのこと。
よそ行きにも普段使いにもなるひと手間を、楽しくお伝えしています。